前回は年齢編成についてだったので、今回はそれ以外の編成面を総括。
Ⅰ 持つか、捨てるか
強化部を最高責任者である大熊清チーム統括部長(以下:大熊氏)は、2月1日に開催したサポーターズコンベンションで、以下のようなコメントを残している。
『(17年シーズン)セレッソは(ポゼッション力では)12位。走行距離・スプリント回数ともに相手を上回ったのにスコアで負けた試合は4試合しかありません。その意味では、セレッソはすごく走る実績はデータでも実証できて、結果も出してきているのですが、(今シーズンは)ACLなどの過密日程を含めて考えると、ボールを失わないで主導権をさらに握る必要があります。(中略)
尹晶煥監督が練習からポゼッションという言葉をかなり使っているのですが、ポゼッション力を上げてさらに強いチームを作ることが非常に重要かなと。そういう意味では(ポゼッション率)50%や60%にしていきたいと考えています。バルセロナの試合を見たことがある方もいるかもしれませんが、バルセロナは60%、70%あります。ボールを失わず、効率的にタイミング良く走る、それがああいうチームなのかなと思います。』
簡単に書けば
1. 17年は相手よりも運動量で勝ったことも飛躍の要因
2. ただし18年は過密日程の為、運動量が必然的に落ちる
3. その為にポゼッションを高める。
4. 目標は50~60%だが、理想はバルサの60~70%
17年はトランジション(攻守の切り替え)の強度が維持出来なくなった夏場、優勝戦線から離脱してしまった。そこで今季はボールを保持して自陣回帰する余裕を持たせる。であるならばまだ解る。ただ大熊氏の言うポゼッションは、果たして何を指していたのか?ユン・ジョンファンは確かにポゼッションというワードを使うことはあったが、少なくとも自陣回帰と捉えることも多かったユン監督と、大熊氏の考えるポゼッションは少し異なりがあるように感じた。
ユン監督はサイドバックからのスタートを軸とし、2列目以降の組み立てに関しては、ディフェンスの規律や規制プレーがあるとはいえ、規制をガチガチに固める訳でなく、プレーチョイスを委ねることも多かった。またボール保持にこだわりを持つ訳でなく、ある程度ボールを捨ててもOKというのは、サガン鳥栖在籍時だけでなく、17年シーズンでも分かる。
結論から書けば、大熊氏の言う『ポゼッション』を遂行したいのならば、監督もしくはスタッフ陣の入れ替え、もしくは大熊氏が掲げるスタイルを体現出来て、セレッソにはいない選手(2~2.5列目でリンクマンを担える選手、アンカーで捌ける選手)を獲得すべきだった。
更に言うならば、これまで何度も述べたように、17年シーズン終了後からは全くオフが無く、ユン・ジョンファンにとっても新しいトレンドをインプットする時間がほとんど無かった。その中で何故180℃逆と言ってもいい理想・目標を掲げたのか。何故17年シーズンに出た最大の課題(夏場の失速)の答えが、最もシンプルな『442・532の精度を高め、トランジションの強度をより高める』ではなかったのか。疲労でパフォーマンスが落ちることを考慮した上で、トランジションの強度を保つ為にターンオーバーが出来るよう、J1最多の選手数を保有したのではないのか。
2018年で大熊氏がセレッソ大阪に来て4年目、ここまでポゼッションに拘りがあった訳ではない。それはトップチームだけでなく、U-23やU-18、レディースも同じ。そしてこれは確実に言えることだが、『ボールを持つ』という土・土壌(人事)は急には出来ない。それはこれまで何千というチームが挑戦し、失敗してきていることだ。
農作物(スタイル)を作る際、土質・土壌(人事)や気候(文化)を第一に考えなければいけない。極論になるが、バルセロナはボールを持たずに主導権を握るサッカーをする土質・気候ではない(近年アカデミーのスカウト状況は変わってきてはいるらしいが…)し、レアル・マドリードは1年間我慢して若手選手を起用出来る土質・気候ではない。それは彼らにはそのような環境を作ってきた歴史があるからだ。
農作物(スタイル)を作る際、土質・土壌(人事)や気候(文化)を第一に考えなければいけない。極論になるが、バルセロナはボールを持たずに主導権を握るサッカーをする土質・気候ではない(近年アカデミーのスカウト状況は変わってきてはいるらしいが…)し、レアル・マドリードは1年間我慢して若手選手を起用出来る土質・気候ではない。それは彼らにはそのような環境を作ってきた歴史があるからだ。
少なくともユン・ジョンファンに、ボールを持って主導権を握るサッカーの土・土壌を作るというタスクを与えること自体が間違っているし、そのような土・土壌を大熊氏が作れるとは、失礼ながら僕は思えない。
また基盤となるU-18にしても、ボールを動かすよりことよりも、ボールを持たせて、奪ってからスタートとするコンセプトを長年築いている。反面攻撃時の約束事は少なく人に頼るので、ムラがあることも特徴。その結果トップ昇格後はポジショニングに課題を持つ選手が多く出たり、練習メニューのルールを理解出来ない選手も数人いた。また3列目にリンクマンの役割を担え、かつミドルゾーンで広い視野を持つ選手が手薄なことも悩ましい。
話は脱線したが、ボールを持つサッカーがしたいのならば、今のセレッソの場合はU-18・U-23から着手しなければいけないし、そこまで本気で変えたいならば、人事の時点で大きな改革が必要になるだろう。
話は脱線したが、ボールを持つサッカーがしたいのならば、今のセレッソの場合はU-18・U-23から着手しなければいけないし、そこまで本気で変えたいならば、人事の時点で大きな改革が必要になるだろう。
Ⅱ 選手編成
| 年齢 | 選手名 | |||||
| 37 | 茂庭 照幸 | |||||
| 36 | ||||||
| 35 | ||||||
| 34 | 酒本 憲幸 | |||||
| 33 | ヤン・ドンヒョン | |||||
| 32 | 丹野 研太 | 藤本 康太 | 田中 裕介 | |||
| 31 | キム・ジンヒョン | 山下 達也 | ソウザ | 田中 亜土夢 | ||
| 30 | オスマル | |||||
| 29 | 水沼 宏太 | 清武 弘嗣 | 山村 和也 | 柿谷 曜一朗 | ||
| 28 | 丸橋 祐介 | マテイ・ヨニッチ | 山口 蛍 | |||
| 27 | 松田 陸 | 片山 瑛一 | 福満 隆貴 | 高木 俊幸 | ||
| 26 | 杉本 健勇 | |||||
| 25 | 木本 恭生 | 澤上 竜二 | ||||
| 24 | 秋山 大地 | 山内 寛史 | ||||
| 23 | 永石 拓海 | 魚里 直哉 | ||||
| 22 | 沖野 将基 | 西本 雅崇 | チャウワット | 米澤 令衣 | ||
| 21 | ||||||
| 20 | 茂木 秀 | 森下 怜哉 | 舩木 翔 | 大山 武蔵 | 斧澤 隼輝 | 山根 永遠 |
| 19 | 安藤 瑞季 | 山田 寛人 | 中島 元彦 |
改めて今季開幕時の選手編成。
即戦力として獲得した選手は
GK 永石 拓海
DF 片山 瑛一
MF オスマル、田中 亜土夢
FW ヤン・ドンヒョン、高木 俊幸
ACL出場ということで、フィジカル強度を保つ為に、そこで強いキャラクターを発揮できる選手を獲得。結果はともかくここの準備は良かった。ただこの移籍市場で獲得した選手のうち、大熊氏の言う「ポゼッション」を体現出来る人材だったかというと、そうでもないが…。Part1やフィジカル編での総括で述べた通り、フィジカル面で17年シーズンのリカバリーが出来ないことは明白で、またユン・ジョンファンをはじめとする現場スタッフが、新たなトレンドをインプットする時間が無い中、フィジカルでゴリ押し出来る片山を獲得したのは、ポゼッション云々を抜きにすれば面白いとは思った。実際アウェイでの川崎戦では、ゲーム終盤フィジカルに特徴のある家長を相手に1対1で完勝するなど、強さはJ1でも充分に通用するところを見せた。個人的には松田陸が負傷した時、右サイドバックで起用して欲しかった選手ではある。
前述した通り、ACLもある分、片山、ヤンドンヒョンの2人のように、身体能力が高く肉弾戦にも気負いをみせない選手を獲得したのは分かる。また田中亜土夢のように、背丈は無いものの技術+走力で相手を上回ることが出来る選手を獲得するのも分かる。ただ彼らをどうボールポゼッションの中に組み込むか?というそもそもの構造を、強化部は全く考えていなかっただろうし、ユン・ジョンファンがリクエストして獲得したであろうヤン・ドンヒョンは、良くも悪くもユン監督が好むFW。かなり言葉を選んで書くと、ボールを保持するスタイルを目指した8月以降、ドンヒョンがチームにフィットするには、ドンヒョン自身が相当の努力をしなければならない状況だった。
後半戦
| 年齢 | 選手 | ||||||
| 37 | 茂庭 照幸 | ||||||
| 36 | |||||||
| 35 | |||||||
| 34 | 酒本 憲幸 | ||||||
| 33 | ヤン・ドンヒョン | ||||||
| 32 | 丹野 研太 | 藤本 康太 | 田中 裕介 | ||||
| 31 | キム・ジンヒョン | 山下 達也 | ソウザ | 田中 亜土夢 | |||
| 30 | オスマル | ||||||
| 29 | 水沼 宏太 | 清武 弘嗣 | 山村 和也 | 柿谷 曜一朗 | |||
| 28 | 丸橋 祐介 | マテイ・ヨニッチ | 山口 蛍 | ||||
| 27 | 松田 陸 | 片山 瑛一 | 福満 隆貴 | 高木 俊幸 | |||
| 26 | 杉本 健勇 | ||||||
| 25 | 木本 恭生 | 澤上 竜二 | |||||
| 24 | 秋山 大地 | 山内 寛史 | |||||
| 23 | 永石 拓海 | 魚里 直哉 | |||||
| 22 | 沖野 将基 | 西本 雅崇 | チャウワット | 米澤 令衣 | |||
| 21 | |||||||
| 20 | 茂木 秀 | 森下 怜哉 | 舩木 翔 | 大山 武蔵 | 斧澤 隼輝 | 山根 永遠 | ピアス・ウェリング |
| 19 | 安藤 瑞季 | 山田 寛人 | 中島 元彦 | ||||
| 18 | 瀬古 歩夢 | 喜田 陽 |
※赤が公式戦10試合以上出場、黄緑が5試合以上出場。
移籍選手は実質的に山内のみで、U-23の魚里が鳥取し、ピアスが加入とトップチームにはさほど変動は無かった。今シーズンはキム・ジンヒョンがナショナルウィーク、ターンオーバー制を採用したACL2試合を除く全試合に出場。またサイドバックという非常にタスクの多いポジションで、フル稼働を果たした丸橋祐介。彼ら2人、ジンヒョンは他の選手との兼ね合いもあって難しかったかもしれないが、丸橋に関しては2年連続でオフの優秀選手賞に選ばれても良いパフォーマンスを魅せた(6ゴール2アシスト)。
Ⅳ 利き足
選手編成のバランス等はPart1に書いたので、そちらを参照として下さい。次はプレーヤーの利き足について。
| 年齢 | 選手 | ||||||
| 37 | 茂庭 照幸 | ||||||
| 36 | |||||||
| 35 | |||||||
| 34 | 酒本 憲幸 | ||||||
| 33 | ヤン・ドンヒョン | ||||||
| 32 | 丹野 研太 | 藤本 康太 | 田中 裕介 | ||||
| 31 | キム・ジンヒョン | 山下 達也 | ソウザ | 田中 亜土夢 | |||
| 30 | オスマル | ||||||
| 29 | 水沼 宏太 | 清武 弘嗣 | 山村 和也 | 柿谷 曜一朗 | |||
| 28 | 丸橋 祐介 | マテイ・ヨニッチ | 山口 蛍 | ||||
| 27 | 松田 陸 | 片山 瑛一 | 福満 隆貴 | 高木 俊幸 | |||
| 26 | 杉本 健勇 | ||||||
| 25 | 木本 恭生 | 澤上 竜二 | |||||
| 24 | 秋山 大地 | 山内 寛史 | |||||
| 23 | 永石 拓海 | 魚里 直哉 | |||||
| 22 | 沖野 将基 | 西本 雅崇 | チャウワット | 米澤 令衣 | |||
| 21 | |||||||
| 20 | 茂木 秀 | 森下 怜哉 | 舩木 翔 | 大山 武蔵 | 斧澤 隼輝 | 山根 永遠 | ピアス・ウェリング |
| 19 | 安藤 瑞季 | 山田 寛人 | 中島 元彦 | ||||
| 18 | 瀬古 歩夢 | 喜田 陽 |
所属した全45名中の左利きを占める割合は、かなり少ない。
特に2列目の選手を含めたアタッカー陣では唯一のレフティーで、ユン監督も高く評価していた澤上が怪我で離脱する期間が長かったのは、非常に痛かった。
今のところ2列目が全員右足。2列目レフティーは今冬の移籍市場のポイントであることは間違いない。
Ⅵ 来季への課題
前述したボール保持率は、17年の49.0%から50.4%へと向上したが、ゴール数はご存知の通りとなった。ゴールゲッターとして期待された杉本健勇、柿谷曜一朗、ヤン・ドンヒョンの3名でリーグ戦僅か10ゴールだったことが最大の要因であることは変わりないが、それ以外の要因も多くある。
来季の監督は東京ヴェルディを2年連続プレーオフに導いたロティーナが就任することが発表された。主力高齢化に加え、これまで述べたように選手編成も良いとは思えない。その中でこの移籍市場をどう戦うか、またどのようにクラブが変わるか。
表面上は良い土質かもしれないが、焼畑農業を繰り返すクラブ。何をしたいのか、また何を目指しているのか?それを数字にすることが当たり前の時代となった。それをどのようにして具体案としてまとめ、言語化することが出来るのか?
「戦術の議論等などは机上の空論」と謳っている間に、その机上の空論が当たり前になり、その当たり前が1年単位で更新されていく昨今のサッカー。フィジカルでもテクニックでも日本よりも勝る欧州の一流フットボーラーが、日々変わる『当たり前』『最先端』に挑戦していく中、横浜F・マリノスはじめ、ヴィッセル神戸やV・ファーレン長崎がそこに向けて走り出した。
そして以前は欧州を起点に活動していたガンバ大阪の宮本監督や、ベガルタ仙台の渡邊監督、湘南ベルマーレの曹監督など、監督自らが欧州へ飛び、戦術だけでなく練習メニューやクラブの哲学をインプットし、自クラブでアウトプットするという人もいる。
Jリーグの『当たり前』の常識も、徐々に変わってきている。今後更なる強力な資金とコネクションを持つ国内外の企業・グループが、Jリーグクラブの経営に携わるだろうし、僕自身もそれを強く望んでいる。ロティーナが来て改善することもあるだろうが、それがセレッソの『当たり前』になるとは限らない。少なくとも今のままでは、土質の悪さを監督で誤魔化すことが、終始続くだけになるだろう。
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